連載: Ankiの使い方 〜覚えるために忘れろ 第5回

Ankiのブラウザーは単語帳のデータにアクセスするインターフェースです。この使い方になれると、計画的な学習が設計でき、きめ細かな学習設定しやすくなります。特にカードの検索条件は、他の機能でも共通に使用する基本情報です。

AnkiとはDamien Elmesが開発している分散学習システム(SRS; Spaced Repetition learning Systems)です。

Ankiの単語帳データにアクセスするブラウザーの使い方になれましょう。

まずは、ブラウザーを開いてみましょう。Ankiの起動し、学習画面の上部のリンク[ブラウザー]をクリックします。図1のようなウィンドウが現れます。左側のメニューは絞り込み条件を選択できます。右側のテーブルには検索条件に一致するデータを表示します。上部のボタンはデータを操作する機能を提供しています。テーブルの下は、データを編集する機能を提供しています。

カード編集画面
図 1. ブラウザー画面 (テーブルヘッダーをControl+クリック/右クリック)

ウィンドウのタイトルに注目してください。現在のテーブルは3255枚のカードを表示していて、その中から1件を選択していることを表示しています。

左側のメニューを見てください。 [現在の単語帳]が選択状態になっています。右の検索フィールドに deck:current と表示していることに注目です。これは、メニューで[現在の単語帳]を選択することと検索フィールドに deck:current を入力することは同じ操作であることを意味します。 メニューを一つづつクリックして、検索フィールドに表示する文字列に注目しながら、テーブルに表示するデータの変化を観察してください。Ankiの単語帳データの検索条件を簡単に学ぶことができます。この知識は、カスタム学習の設計に役立ちます。

表 1. メニュー項目と検索条件対応例
項目 条件
今日追加したカード added:1
今日学習したカード rated:1
今日間違えたカード rated:1:1
新規 is:new
学習中 is:learn
復習 is:review
期日 is:due
保留 is:suspended
延期 is:buried
無駄 tag:leech
単語帳 中学英単語 deck:中学英単語
ノートタイプ 英語単語 note:英語単語
タグ Grade1 tag:Grade1

詳しい情報はマニュアルのBrowser項目(日本語訳)で説明しています。

Commandを押しながらクリックすると複数選択できます。And条件になります。OR条件にしたい時は、キーボード入力で"OR"を追加入力しますCommand + Optionで選択項目を排除します。この場合選択項目の先頭に"-"が付きます。

この使い方を覚えれば、マニュアルがなくてもブラウザーでカスタム学習の検索条件を簡単に設計できます。さらに詳しい内容を設定したい時には、マニュアルを読むのが良いでしょう。

検索条件の保存

Anki 2.0.27 以降のバージョンでは、検索条件を保存できるようになりました。

  1. 検索条件欄にキーワードを入力し、入力欄の右側のハートのアイコンをクリックします。
  2. 検索条件の名前を指定するダイアログが現れたら、好きな名前を入力します。
  3. 左のサイドバーの[検索条件]に指定した項目が現れます。

保存済みの検索条件を入力すると、入力欄右にあるアートのアイコンは赤くなります。 この赤いアイコンをクリックすると、検索条件を削除できます。

検索条件の保存
図 2. 検索条件の保存

テーブルの表示項目の追加、削除はテーブルのヘッダーをControlを押しながらクリックしてください。表示項目を選択できます。図1に選択項目リストを表示しています。

テーブルの上部に選択したデータに処理を加える色々なボタンがあります。タグの追加削除、単語帳の変更、カードの削除、カードの保留などはよく使う機能です。

ボタン以外にもメニューバーから次のような機能が使えます。

スケジュール変更

メニューバーから[編集]>[スケジュール変更]を選択します。 新規カードの最後尾に移動したり、復習期日を変更できます。

新規カードを並び替える

メニューバーから [編集]>[新規カードを並び替える]を選択します。 ランダムに並び替えたり、既存カードの順序も変更したりするオプションを設定することができます。

カードのプレビュー

カードのプレビュー機能を使うと学習画面に入らなくても、カードの内容を確認できます。

ウィンドウ上部の [プレビュー] ボタンを押すと、プレビュー画面を表示します。 (OS X のショートカットは Command+Shift+P)

プレビュー画面
図 3. プレビュー画面

ウィンドウ下部の [ > ] ボタンを押すと、一覧の上から下へカードをめくりながら移動します。 項目を編集したい時は、ブラウザーの表示項目を編集します。

なお、学習画面と比較すると一部制限があり、解答キー入力機能などが使えません。

今日の学習で間違えたカードに色々な処理を加えていきましょう。まず、今日間違えたカードを選択します。左メニューの項目を選択するか rated:1:1 と検索フィールドに入力してください。なお、過去1週間に間違えたカードは rated:7:1 で選択できます。

保留する

今日間違えたカードは、一旦復習スケジュールから外します。この場合は、保留処理を行います。メニューバーから[編集]>[全てを選択](Command+A)を選択した上で、テーブル上の[保留]ボタンを押します。

左メニューの[保留]をクリックするか、検索フィールドで is:suspended を入力してください。保留カードの一覧の中に追加になっていることが確認できます。

保留を解除する

保留を解除したい場合は、解除するカードを選択して、テーブル上の[保留]ボタンを押します。これで復習カードに戻ります。左メニューの[復習]をクリックするか、検索フィールドで is:review を入力すると、保留が解除になったカードが移動してきていることを確認できます。

タグを付ける

タグを付けたい場合もあるでしょう。カードを選択して、テーブル上部の[タグを追加]ボタンを押します。タグを入力するダイアログにタグの名前を入力します。例えば"今日の失敗"というタグを付けるた場合、左メニューには[今日の失敗]という項目が追加になり、tag:今日の失敗 で検索できるようになります。

別の単語帳に移動する

別の単語帳にカードを移動したい場合を考えましょう。この場合は、カードを選択して、テーブル上部の[単語帳を変更]ボタンを押します。移動したい単語帳名を選択して、[カードを移動]ボタンを押すとカードが移動します。

ここで、[追加]ボタンを押すと、単語帳の新規作成ができます。新規作成の場合、単語帳の名前を入力して[OK]ボタンを押すと、[カードを移動]ボタンを押すことなく移動することに注意してください。

単語帳の新規作成でサブ単語帳を作ることができます。例えば「中学英単語」の中に「今日の失敗」というサブ単語帳を含めるなら、中学英単語::今日の失敗 と入力します。親と子の区切りに"::"を使います。

カード編集画面
図 4. カードを新規作成のサブ単語帳に移動

Ankiのブラウザーを使った単語帳のデータの選択方法に慣れると、データの管理、分類が簡単になります。 さらにこの知識を元にして、学習計画の設定をきめ細かくカスタマイズできるようになります。

次回は、今回の応用としてカスタム学習の方法を説明します。自分の好みに合わせた学習設定を作っていきたいと思います。

2013/05/10: 初出

2014/09/21: 再構成、検索条件の保存を追加