Anki を使って書籍付属の音声データを自己評価で並べ替え、苦手なデータを集中して復習し、教材の内容理解を深める方法を説明します。

最近の外国語の音源付き書籍には、音声データを一分以内に分割して、本文の説明もオーディオブックのように収録しているものもあり重宝しています。ただ残念なことに、データを音楽プレイヤーで苦手なデータだけを繰り返し聴けないことが不自由でした。 毎日音楽プレイヤーを持ち歩いて復習する時、最初から再生すると、先頭のデータに再生頻度が集中するし、ランダムに再生すると、まだ学習していないデータを先に聞かなければなりません。自分の進度に合わせて少しずつ足していくのも面倒です。 本当にやりたかったことは、音声データを聞いてその場で理解出来たか記録し、繰り返し聞く必要のあるデータ順に並び替えたいのです。

Anki を利用すれば、苦手なデータを集中して聞くように並び替えてくれます。また、復習対象のデータは少しずつ追加できるので、本体の書籍の学習進度に合わせてデータを聴くことが出来ます。 今回の趣旨は、Anki を使って理解度順のソートする自動プレイリスト機能が付いたメディアプレイヤーを作ることです。

なお、ここでは書籍のデータを全て Anki に持ち込むことは意図していません。 手間をかけずに書籍で学ぶアフォーダンスを残しながら、特殊な音声プレーヤーでの学習経験も付け加える方法になります。

書籍に付属している CD データや専用ダウンロードデータは、Media Import というアドオンを使うと一括で Anki に登録できます。 このアドオンは、音楽データを保存しているディレクトリと、埋め込むフィールドを指定すれば、自動的にカードを作ってくれます。

アドオンの設定画面は、メニューバーから [ツール] - [Media Import] で呼び出すことが出来ます。

Media Import
図 1. Media Import

上図の設定では、基本ノートタイプの Front フィールドに音声ファイル (Media) に指定しています。 そして Back フィールドにファイル名 (File Name) を指定したときに作ったカードが下の図になります。

カード表示例
図 2. カード表示例

このカードは、表面の表示はなく音声データのみです。裏面は書籍を使って分からない箇所を確認する際に手がかりになるファイル名を表示する設計です。あまりに表示内容が少なくて物足りないと感じるかもしれませんが、使ってみると音声内容に集中できる必要十分な内容だと分かります。

実際にフィールドの内容を表示すると次のようになります。

ノートエディタ
図 3. ノートエディタ

このアドオンの詳しい使い方は、画像、音声、動画などメディアファイルを Anki へ一括登録 で説明しています。

教材の理解は書籍を読んで行った上で、その理解を Anki で繰り返し復習します。 実は最初の紙面での教材の理解が大切で、ここで十分理解が深まれば Anki での復習が捗ります。不十分なまま復習をはじめると、Anki と書籍の間の往復が頻繁に発生し効率が低下します。

Anki の学習設定

Anki の単語帳のオプションの設定 (新規カード) は、表示順を [新規カードを追加順に表示する] を選び、一日の新規カードの上限を書籍の学習進度と合わせます。 毎日一章ずつ進める計画であれば、音声データも一章分のファイル数に設定します。ファイル数が一定しない場合は、新規カードの追加はゼロにしておき、カスタム学習で必要な枚数を補充するとよいでしょう。

Anki での学習

カードを開いたら再生する音声を聴いて、聴き取れたかどうか判断して解答ボタンを押します。 何回聞き直しても聴き取れない場合は、カードには原稿はないので、保留扱い (ショートカット: @) にして後でまとめて本で確認します。本で分からなかった内容を確認したら、ブラウザから保留したカードを選んで保留状態を解除します。

この方法だと、途中で学習セッションを中断することがなく、音の聴き取りに集中できます。音楽プレイヤーでループ再生して聞き流していた頃に比べると、音声の内容や論理展開に注意が向くようになりました。

また、単語帳のオプション [忘却] 項目で、無駄なカードになる回数を 2 回、無駄なカードの処理を [カードを保留] に設定しておけば、[もう一回] を 2 回押したら自動的に保留処理を行うので、さらに手数を減らすことが出来ます。

単語帳のオプション設定 (忘却)
図 4. 単語帳のオプション設定 (忘却)

iPhone (AnkiMobile) で学習するのであれば、マルチタッチスクリーンのジェスチャを活用して、限りなく画面を見る時間を減らし、更に音に集中することが出来ます。

この投稿は Anki の固定観念から外れた使い方を試しているうちに生まれたものです。

Anki はフラッシュカードをメタファーとしているので、紙のカードの視覚イメージに縛られて、カードに文字や画像を表示することから外れた使う発想はなかなか出来ません。カードの上に音を貼り付けるというのは、直感に反することですが、メディアを扱うアプリケーションとしては自然な使い方です。

Anki の復習がペースメーカーになってくれるので、書籍での学習も事前に立てたスケジュールの精度が上がると言う効果も得られました。 簡単な方法で組み合わせても書籍と Anki の特長をそれぞれ補い合った使い方を体験できるのではないかと思います。