Anki を使うと効率的にカードを学習できますが、大量にこなせば当然それにともなって、負担が大きくなります。 Anki を長続きして使うコツとして、前菜カード、最適なセッション時間と単語帳サイズの一致、単語帳の優先順位の設定を取り上げます。

はじめに

Anki を使うと、紙のフラッシュカードに比べてたくさんのカードを一度に効率的に学習できるようになります。 もちろんそれは利点なのですが、大量のカードをこなそうとすると、それだけの意志と持続力が必要になります。 その負担が、毎日学習し続ける負担になります。 そこで、その様な負担に打ち勝ついくつかのコツを紹介しましょう。

前菜単語帳

大量に復習課題があると、Anki するのが億劫になりがちです。何かと理由を付けて今日はやめておこうと思うのは人情です。 そのような、後ろ向きな気持ちを振り払う特別な単語帳を用意します。

1、2 分ですぐ簡単に終わる楽勝な単語帳 (前菜単語帳) を特別に用意しておきます。興味のある内容のノートを絞って登録するのがよいでしょう。

一瞬で終わるのでどんなに時間がなくても、気持ちがのらなくても確実にやり遂げることができます。 この前菜単語帳をやっているうちに、やる気がわいてきたりします。

自分では病理学の単語を登録しています。ギリシャ語由来の特長のある綴りを楽しんでいます。 現在のノート数は60位で、平均学習時間は 30 秒です。適宜追加して学習時間を調整しています。 現在このような 3 種類の前菜単語帳を運用しています。

どのような事情があっても、毎日最低限一つは完了できるようにして、その日何もできなくかったという挫折感を排除してます。 本命の単語帳が全く手がつかなかったとしても、一つはやったという気持ちがあると前向きになれます。

最適な学習時間と単語帳サイズを合わせる

自分の快適な最大学習時間と単語帳のサイズを一致させると、効率的に機械的に復習がはかどります。 快適に学習できる時間内に、一つの単語帳の期日のカードの復習が終わるように設定します。

単語帳のサイズが大きくなると、セッション中に集中力や意欲が落ちたり、 割り込みのイベントが発生して学習セッション中に中断することが多くなります。 その結果、再学習中のカードを必要以上に繰り返したり、セッション途中で放棄することになります。 また、ストレスに長時間さらされるため Anki を使うことに否定的な印象を持つことになります。

このような後向きな要因を排除するため、快適に学習できる学習時間に合うように単語帳サイズを決めます。

最適な学習時間を調べる

1 回の学習セッションにストレスのない可能な時間はどれくらいか自覚していますか。 単語帳に収録しているカードの復習を実際に学習するセッションの時間に合わせます。

自分が無理なく集中して Anki で復習できる時間は分かりますか。 統計情報を手がかりに調べることができます。 学習日の平均がその単語帳を復習するのにかかった時間です。

下の図は、1500枚収録の単語帳 (熟知 80%) の例です。学習日の平均が 12 分となっています。 つまり、私が使った場合この単語帳の平均学習時間は 12 分です。

Anki 統計情報 学習時間
図 1. Anki 統計情報 学習時間

単語帳サイズの調整

使用中の単語帳の学習時間が現実に体感で辛く感じているようであれば、 最適な学習セッション時間になるよう単語帳を分割調整しましょう。 一つのセッションで一つの単語帳が終わるようにサイズを決めます。

なお上の例の単語帳は、電車の 15 分の乗車時間で復習できるよう設計しています。

当然、熟知のカードが増えれば、平均学習時間は減少します。その場合は類似の内容の単語帳と合併して時間を調整します。

優先順位を決める

どの単語帳を優先して完了するか決めておきます。 時間がないとき、気が乗らない時には優先順位の高いものから済ませておきます。

優先順位の決め方は、人それぞれだと思います。 私は熟知の比率の高い、簡単に終わるものを優先して順位付けしています。

優先順に単語帳を並べる

単語帳一覧上から優先順位順に並ぶよう単語帳の名前を決めます。毎日の学習は一覧の上から順番に機械的にこなします。

Anki の単語帳一覧はアルファベット順に表示します。大文字と小文字では、大文字が先に表示します。 ! はアルファベットより前に、~ はアルファベットの後に表示します。

やり残しが出たときのフォロー

やり残しがでても翌日であれば、一日の開始時刻をずらすと、前日と当日の復習を別々に復習できます。 単語帳の学習セッションの時間を変更することなくこなせます。次の手順で学習します。

  1. まず、[環境設定]-[基本]-[一日の開始] で時刻をずらします。既定では 4 時になっていますが、最大 23 時までずらせます。

  2. 前日の残りを復習します。

  3. 一日の開始を元に戻します。

  4. 当日分の復習をします。

Anki 環境設定
図 2. Anki 環境設定

TPO も決めておく

絶対に守らなければならないとは思いませんが、毎日、何時、何処で、どの単語帳を学習するか決めておくのがベストです。 単語帳もその条件に合わせて最適化します。 自然に Anki に向かえる環境を用意しておくと、毎日休まずに Anki が使えるようになります。

AnkiMobile ノート

Anki の iOS 版アプリ AnkiMobile Flashcards を使っている場合も同じように設定できます。

統計情報

学習日の平均時間は、統計画面 [Review Time] 項目の [Average for days studies] で調べることができます。

統計情報
図 3. 統計情報

一日の開始時刻の変更

単語帳一覧の右上歯車アイコンをタップして、環境設定画面を開きます。 [Review] - [Scheduling] と選択して、 Day Starts (日付変更時刻) で一日の開始時刻を設定します。

一日の開始時刻 (Day Starts) の設定
図 4. 一日の開始時刻 (Day Starts) の設定

おわりに

Anki の単語帳 (Deck) は、学習カードを分類する単位と考えるのが普通ですが、毎日の学習セッションを決める基本単位でもあります。 単語帳のサイズ設計を慎重に行うことによって、継続するのに最適な学習セッションが実現できます。

学習セッションの最適化を考慮した上で、前菜単語帳をつかって Anki を使い続ける習慣を維持し、一セッション一単語帳となる快適な時間で学習するルーチンを作り、期日の復習を全部こなせない時の優先順位を作ることを Anki の学習を長続きするコツとしてまとめて紹介しました。

更新情報

2014/09/06: 初出

2016/04/27: 追加 AnkiMobile 2.0.21 対応